【 雑木林のパンやさん】 物語

雑木林のパンやさんは、火曜日と木曜日は14年間、土曜日のみは3年間営業していました。17年間、たくさんのお客様に来ていただき、2008年6月末に閉店しました。

口の立つやつが 勝つってことで いいのか 著者 頭木弘樹    「かわいそう」は貴い

 のんちさんのブログで この本の「表題」をみて

読んでみたくなり、図書館へ~~

ようやく先週借りることができ 読み終えました。

 

  

 

      はじめに、著者は・・・

 

 私はこうして、本を書くという、「言葉を使う仕事」をしているが、

活字好きで 読書好きというわけではない。

それなのに「言葉を使う仕事」をするようになったのは、思いがけず二十歳で病気に

なったからだ。それも難病に。

 難病という特殊な状況のせいで、言葉の難しさを強く意識するようになった。

私の体験が、その他の多くの人にとっても、少しは参考になるかもしれない。

たんに自分へのヘマなのではなく、言葉の問題と気づけるかもしれない。

そうなるといいなと願っている。

なお 私は活字が苦手で、本もすぐに投げ出してしまうほうなので、そういう私でも

読めるように、いろいろ工夫してみた。

かえってうるさく思う人もいるかもしれないが、読書が苦手な人にも読んでもらえると

いいなぁと、これも願っている。

 

 著者紹介

大学3年の二十歳の時に難病(潰瘍性大腸炎)にかかり、13年間の闘病生活を送る。

医者の言葉は理路整然としている。「潰瘍性大腸炎とは大腸に炎症がおきる病気であ

る」というふうに。

しかし、患者として体験する潰瘍性大腸炎を説明しようとしたら、そんなにすきっとし

たものにはならない。

さまざまな症状や痛みや不快感などがあり、別物のようになった腸で生きていくとい

う、ちょっと説明の難しい体験であり、社会との関わり方まで変わってくる。

 

 

 

  「かわいそう」は貴い

 

     本文から抜粋して

「障がいの社会モデル」という考え方がある。世の中が多数者に合わせて作らられてい

るから、少数者は障がい者になってしまう。

たとえば、目が見えない人の方が圧倒的多数だったら、世の中は目が見えない人に便利

なように作られる。目の見える人は、照明がほとんどなくて真っ暗だったりして、不自

由な生活を送ることになり、「目が見える」という障がい者になる。

落語「一眼国」では、2つ目のある人間が見世物にされるのだ。

 その観点から言うと、障がい者はかわいそうなわけではなく、かわいそうにされてい

る。むしろ「かわいそうではない」ことに気づくことの方が大切だ。

そして、かわいそうではない社会に変えていく。

 

 しかし自然にわいてくる「かわいそう」という気持ちを、ただ否定していいのか?

60年代のテレビドラマ「記念樹」のフィルムが発見され ⅮⅤⅮ化された。

若き 山田太一が書いた回で、児童養護施設出身の青年(石立鉄男)がゴルフ場の

キャディーをしていて、アメリカ兵のロジャーから、たくさんの食べ物や菓子や日用品をもらう。

それを 仲間の男が非難する。

同情されて、物をもらって、喜んでいるなんて、なさけない。

自分だったら、受け取らないと。

それに対して青年はこう言う。

「人の親切ってものはな、もっと大事なものなのなんだ。

そういう親切のおかげで、俺は生きてこられたんだ。(中略)

他人の親切がなきゃ、一日だって生きちゃこられなかったんだ。(中略)

あわれみはうけたくねえ、あまりもんなんかニコニコしたくねぇなんて、

粋がって言えるおまえは幸せだよ。

俺はロジャーさんの親切がとても嬉しいよ。

多少、俺の自尊心が傷ついたって、ロジャーさんの気持ちを傷つけるわけにはいかない

んだ。

 これを聞いて、泣いてしまった。私も難病で長く闘病生活をしていて、人の親切がな

ければ生きてこれなかった。

障がい者はかわいそうではない」という認識は大切だし、社会を変えていかなければ

ならないのはもちろんだ。

しかし、まだ変わっていない社会にあって、同情してくれる人の存在はとても貴い。

そういう人がいなければ、現状、生きていけないし、世の中も変わっていかないだろう。

「かわいそう」や同情をよくないこととしてしまっては、そういう人たちの気持ちも

行動も萎縮してしまうのではないだろうか。

それが 心配なのだ。

 

    ******************

 

 このエッセイを読んで まず思ったことは 息子のマー君のこと。

この子は かわいそうな子ではないと 思い育ててきました。

またそんな風に言われたことも、ありませんでした。

今回 この本を読んで~~

言われたことはなくても、同情やかわいそうと思い・・・お付き合いをしてくださって

いた方が たくさんいたに違いありません。

まだ 変わっていないこの社会にあって、同情してくれる人の存在はとても貴いものな

んですね。

 

 ⁂ このエッセイ集は 興味深いテーマが盛りだくさんでした。