辰口に家を建てる前
金沢の宿舎に住んでいた頃 週に一度
マー君と一緒に ちっちゃい公園文庫へ
よーく通っていました。
その日は 大きな手作り紙芝居をお母さんたちが制作し 披露して下さるとの事。
ちっちゃい公園文庫には たくさんの子供たちが・・・ 見たいねー楽しみだねーと
いう雰囲気を感じながら・・・マー君と一緒に 空いているところに座りました。
紙芝居の演目は【じごく の そうべい】 田島征彦作
聞き覚えのある声がしたので 振り向くと スウさん親子です。 挨拶をすると
間もなく 拍子木がなり はじまり・・・はじまり・・・
いよいよと いう時に マー君が アーアーと声を出したのです。
楽しみにしていた男の子が【うるさい~】と言ったので・・・母親の私は そうだろう
と思い マー君を抱いて 立ち上がろうとしたその時・・・
【うるさくなんかないよー】と 声がしました。スウさんの愛娘万依ちゃんの声です。
まわりの子供たちは 紙芝居が始まろうとしている その時だったので 聞こえてなか
ったようです。私には ハッキリ聞こえたので、もう少し座っていようと思い座り直し
ました。 マー君はと言えば その後声を出すこともなく 最後まで雰囲気を楽しんで
いたようです。お礼を言って帰宅する時・・私の心はポッカポカでした。
幼稚園の帰りに ちっちゃい公園文庫へ立ち寄った万依ちゃんからの【うるさくなんか
ないよー】を言ってくれたお陰で 紙芝居を最後まで楽しむことができました。
そのことをお礼と共に伝えたくてスウさん宛に手紙を書きました。
間もなく スウさんからも便りが届きました。 スウさんも万依ちゃんの【うるさくな
んかないよー】は聞こえてなかったとのこと・・・。
その数年後
もう一杯の紅茶の時間―水野スウ
まわれ、かざぐるま
が 出版されました。 1990年3月3日 発行
万依ちゃん 7歳の誕生日に彼女のことを いっぱい書いた本が出版されたのです
その本の 190ページに【うるさくなんかないよ】が載せてありました。
***文字が小さいので 書き写します****
【うるさくなんかないよ】
家庭文庫を開いている友だちが何人もいるので、幼稚園の帰りによく万依と文庫へ寄
り道します。その日は行ったらちょうど紙芝居がはじまるところでした。あわてて飛び
こんで隣を見たら、偶然、顔なじみのマー君がいつもみたいにお母さんのひざにもたれ
て、半分寝そべった格好で紙芝居をみつめています。マー君は万依より上だけど、歩い
たりしゃべったりできません。でも何か感じることがあると、「あーあー」とか「うー
うー」って声に出す。その日もそうでした。すると横にいた小学生の男の子が、いきな
りマー君に向かって言ったのです、【うるさいよ】。間なしに【うるさくなんかない
よ】と、万依が小声で言い返しました。
ほんの一瞬の出来事だったけど、マー君のお母さんはそれがとってもうれしかった、と
後で手紙をくれました。その手紙を万依に読んで聞かせると「だってあん時マー君は
ね、あーあーって言って、おもしろいって言ったんだよ。だのにあの男の子、どうして
うるさいって言ったのかな、きっとまだよくマー君とお友だちじゃないからかな」。
万依のこんな感じ方は、あちこちの文庫やわが家の「紅茶の時間」でいろんな子供たち
と文字通りまぜこぜでふれあう中から、いつのまにか育っていったものかもしれません
親だけが育ててるんじゃないな、と、つくづく、しみじみ、思ったことでした。
水野スウさんの簡単な紹介
エッセイストで 何冊も随筆を出版されています。
1984年11月22日からオープンした 「紅茶の時間」は
万依ちゃんが生まれて・・・子育て仲間がほしくて ただそれだけの
理由で 週一回 「紅茶の時間」を始めたのです。と書いてありました。
万依ちゃんが通学していた小学校でパン作り( ^ω^)・・・